4月25日に起きたマグニチュード(M)7.8の地震と
5月12日に発生した、マグニチュード(M)7.3を始めとする
大きな数回の余震を体験した現在
ネパールに暮らす人々は、色々なことに不安を感じていますが
そのうちの大きな不安の1つは
「今住んでる建物大丈夫なの?」と言うものです。
子ども達が大好きな剣道。
お稽古場の武道館も被災しています。

これは25日の後に撮影したものです(余震の前です)。
2階の梁の上の立上がりの壁が
全部、崩落してしまって
すっぽりと三角形の空間が開いています。
これだけの面積のブロック(もしかすると焼成レンガ)が
バラバラと落ちて入り口を塞いだりしたのを見た方は
「武道館が、大変なことになってる!」と
思われたのではないかと想像します。
天井も、仕上げ材が
部分的に外れてしまっています。

加藤によると、床材もひどく波打っていて
割れているそうです。
こんな状況を見てしまうと、一般の方には
武道館が、激しく壊れてしまったように
思えるのではないかと想像するのですが
立ちあがりのブロックが崩落するのも
天井材が落ちるのも
建築的には予想できたことです。
本当の被災度合いは、
構造体がどれぐらいダメージを受けているか
クラックがどの位置に、どういう状態で入っているかなど
総合的に全体を見ないと判断できません。
昨日、東京大学 生産技術研究所で、土木学会主催の
「ネパール地震 地震被害調査結果 速報会」と言う報告会が開催され
東京事務所の石川も建築技術者のはしくれとして、参加してきました。
ヒマラヤ域のプレートやテクトニクスの特徴
ネパールの構造物の概論について1時間の発表の後
3つの先遣調査隊の報告が行われました。
いずれも数日間の限られた調査時間の中で
まとめられた速報です。
地震の波形から読み取れる特徴と地震力の大きさが
建物の被害と一致していない事など
(つまり平たく言うと、大きな地震だったのに、その割にはカトマンズ市内の建物の被害が少ない)
今後、更なる解析が求められますが
個人的には、色々と収穫のあった報告会でした。
地震後、クンデ・ハウスでは
子ども達の安全を確保するため、寝る際に
建築的な観点から、いくつかのことをやっています。
具体的にいうと、
・より小さい部屋に、子ども達を寝かせる事(構造的に強い)
・2段ベットの下の段に2人づつ寝かせる事(万が一の際の生存空間の確保)
・必ず窓のカーテンは閉めて寝る事(ガラスの飛散防止)
などを実行しているのですが、昨日の速報会で初めて知った知識としては
組積造の建物では、万が一、生存空間が確保出来ても
「粉じんがひどくて呼吸が出来ず窒息するケースが多い」という事です。
ネパールでは組積造(石、コンクリートブロック、レンガなどを積み上げて作る)の建物が多いのですが
日本で仕事をしていると、組積造の建物を作る依頼はまずないので
それが、実際に壊れた際にどうなるのかは
建築に関る人の間でも、一般的には知られていないのです。
この事実を踏まえて、また子ども達の寝る場所について
再検討し、対策を考えます。
こんな状況だと、野原にテントが一番安全!みたいな結論になるのですが
それとて、ジャッカルが出るこの地区では、また別の危険もありますし
当面、倒壊する危険にさらされていないならば
居住性を考えると、はやり建物内で生活したいものです。
とはいえ、詳細な被災状況を確認し
建物の安全性を判断する必要がありますので
石川は夫と2人で、来週からネパール入りし
建物の被災度を診断してきます。
2人とも1級建築士ですが、
旦那さんは構造を専門とする技術者なので
より高い専門性で、被災度を診断できると思います。
クンデ・ハウス、クンデ・ハーバルクリニックを始め
カトマンズ武道館、子ども達の通うバヌバクタ学校
常日頃お世話になっている在住日本人の方々のご自宅などを
回る予定です。
実はちょっと驚いたのは、
震災後、比較的早い段階で
ネパールの政府が派遣したと思われる
「応急危険度判定士」が
(日本での名称はこれですが、ネパールではどういう資格の方か分かりません)
被災建物の危険度を判断し、
赤…危険
青…やや危険
緑…安全
という紙を貼って回っていたという報告が
Facebookに上がっていました。

こちらから写真をお借りしました
まさかこういう方がネパールに居て
震災後の混乱した中で
この様な事が行われるとは思っていなかったので
「ネパールって、なかなかすごい!」と思いました。
でもちょっと突っ込ませて頂くと
赤が危険なのは誰でも分かるのですが
緑と青の安全性の度合いが、いまいち不明確で
青が「やや危険」と言うのは、
感覚的にはピンとこない感じなのではないかと
勝手に心配になっていました。
日本人的な感覚としては
青は「そこそこ安全」みたいな色に思えるのですが…。
あくまで個人的な感想です。
色の一般性や意味合いは、民族によって異なるので
もしかしたらネパール人的には、
青は結構、注意喚起の色かも知れません。
ちなみに、日本では
赤…危険:立ち入り危険
黄…要注意:十分注意
緑…調査済み:建物使用可能
という区分けです。
あくまでも、二次災害を防ぐための
「緊急性」「暫定性」を含んだ判断です。
応急危険度判定は、クンデ・ハウスのあたりには
来て頂いてない様です。
とにかくまずは、詳細なクンデ・ハウスの建物診断をして
安全性を確認し、安心したいです。
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