建物の被災度調査 2日目 その2


たった今、届いたばかりの子ども達の写真を
先にアップしますね。

一昨日から、学校が通常授業になり
校庭での授業も、教室へと移動して
やっと学校生活も落ち着いて来ました。
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日常が戻ってくると、毎日の大量の宿題も復活です。
既に午後9時を過ぎようとしていますが、
まだまだ宿題タイムです。


建物の被災度調査 2日目 その2

アムチの親しいお坊さんが在籍するボダナートの僧院から、
建物調査の依頼を受け訊ねた。
こじんまりとしたゴンパは、階数も低く、壁厚もあり、全く損傷がなかった。
「どう見てもこのお寺、大丈夫なのに何が不安なのだろう?」
疑問に思いつつ、食堂に案内された。
「まずはお食べなさい」と、ベジトゥクパをご馳走になった。
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今日は検査の予定がぎっしりなので、あんまりのんびりしている暇はないのですが…
と思いつつ、トゥクパをかき込む。
そこで本題が語られた。

地震後、問題になっているはこの小さなゴンパではなく、
隣接した壮麗な建物のゴンパだった。
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いくつもの僧坊とお堂からなる大きなゴンパ。

写真奥の6階建ての建物は、最上階が潰れ、
地震後は誰も中に入っていないと言う。
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写真右手の黄色い建物が、
最初に尋ねたゴンパの3階建ての僧坊。
奥の6階建ての僧坊は覆いかぶさるように巨大で
次の地震で倒れてくるのでは?
倒れてくるとしたらどの方向に?
と言うのが、今回、お声を掛けて頂いた理由だった。

僧院に所属している数百名の僧侶たちは、
現在パルピンの修行場に全員避難しており、
寺守りの僧侶数名だけが、庭に張られたテントに残っていた。

お寺の人たちも近隣の人たちも誰もが
「次の余震が来たら、この建物は崩壊する」と思っている。
6階建ての建物は巨大で、近隣の建物との距離も狭い。
もしも本当にこの建物が崩落するようなことがあれば、
隣の小さな寺院などなくなってしまう。
近隣への甚大な影響は避けられない。

私達が建物の中に入って調査すると言うと、とても驚いていた。
確かに最上階がぺしゃんこになって
スラブが傾いている状況は、下からでも見えるため
それだけに着目したらとんでもなく危険だと思えるのだろう。

かろうじて鍵だけは開けてくれたが、
誰も建物内には怖がって入らない。
「私達だけで見て来ますから大丈夫ですよ」と言うと、
皆、安心した表情で足早に建物から離れた。
もちろん私達だって、危険な建物には入らない。
外観と1階の階段室から、立ち入り自体は可能だと判断したのだ。

階段室の壁には、RC(鉄筋コンクリート)の柱、梁の取合い部分に、
もれなくひびが生じている。
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(つまり縦横に入っているひびの部分が、柱や梁とレンガ積みの壁の境目)

詳細に調べるには、表面のモルタルをはがして、
レンガの積みの壁の状態がどうなっているか見なければならないが、
柱梁の取合い部分以外にひびが無いため、
レンガ自体にズレやひび割れは生じていないと考えられた。

「今後もこの建物が使用可能なのか」を見極めるには、
さらに詳細な調査が必要だが、
今回のミッションは限られた時間の中で
「今後の余震でどうなるのか(倒壊するのかどうか)」を判断するため、
巨大な建物の内部を足早に見て回った。
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基準階の居室部分には、あまりひび割れは見受けられない。

6階部分もほぼ無傷。
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屋上に上ると、こうなっていた。
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大きな建物を賄うための大きな給水タンクが、
重さと偏った配置によって塔屋をつぶしてしまった。
この潰れて傾いたスラブだけを下から見上げて、
お坊さん達は「建物の最上階が完全に潰れた」と表現していたのだ。

建築的にいうと、
この給水タンクがこの配置では致し方なし…と言うところだが、
その倒壊の結果として、他の構造体を傷つけている様子もないので
見かけのインパクトは大きいが、
建築的には建物全体への影響はほとんどない。

建物を見て回った時に一点だけ、違和感があったので
「もしかしてこの建物は、最初は3階建てでしたか?」と聞いてみた。
僧侶によるとまさに、最初は3階建てで、
その後、増築されて今の6階建てになったとの事。
「なぜ分かるのです?」と質問された。

良く見ないと分からないが、
3階だけが他の階と違って微妙に階高が高いのだ。
全体のプランニングから考えても、3階だけ階高が高い理由は
もともとそこが最初は最上階だったと考えるのが、設計者としては妥当だ。

最初から6階建てを見込んで設計された建物だったのかどうか…。
増床はネパールでは良く行われる事だが
果たしてそれが、最初から計画されたもので
構造に織り込み済みなのかどうかは、設計図を見ないと分からない。
ただそれが無い以上、現状から判断するしかない。

総合的に構造体の状況から考えて、
この建物に関して前回と同じレベルの余震が来ても、
まずは倒壊の危険は無いと判断した。

次に大きなお堂を有する建物を診断。
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こちらは階段室の損傷が激しかった。
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1階の壁は、モルタルが剥がれ落ち
レンガ積みの壁にも亀裂が入っている。
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大きな余震が来て直ちに崩壊する様な状況ではないが、
強い余震が来るたびに、1階のレンガ積みの壁の亀裂が増え
だんだん建物の重量を分担して支える事が、難しくなってくる。
但し、お坊さんたちが恐れるように「次の余震で崩壊」と言う状況ではない。
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他にも案内された別建物を見たが、こちらは特に問題は無し。
とにかく「次の余震で建物が壊れる」という状況ではない事をお伝えする。
少しは安心してもらえたと思う。


次にアムチの友人のアムチが診療所を構える建物へ。
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本日最大の危険建物。
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近づきたくもない被災状態だが、
何とまだこの建物には、複数の部屋で人が生活している。
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見た目にひどく傷ついているのは1階のみで、
2階以上はクラックひとつない状況のため、
上階の住人達は平気で生活している模様。
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1階の柱は、鉄筋がむき出しになっている。

ゴルカに医療支援に行っているアムチの友人に電話し、
とにかく早く転居する様に話す。
実は地震後、ヨーロッパの技術者にも
「この建物は居住不可。危険。」と言われていたらしいが、
恐ろしいもので集団心理が働いて、何となく住み続けているらしい。

もっと驚いた事に、この建物の庭に、
職人が大勢で井戸を掘っていた!!信じられない。
状況写真だけ撮り、早々に建物を離れる。

この地域は建物が密集しており、
もしも今後の余震でこの建物が倒れるような事になれば、
周囲に甚大な被害をもたらす。
行政代執行で壊して欲しいぐらいの建物だが、
現状のネパールでそんなことは期待できない。
そして多分、明日からもアムチの友人以外の住人は、
ここに住み続けるのだろう。
それを、どうにもできない無力感。

物件を見終わる毎に、水分補給。
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インドでは熱波で多数の死者が出ているが、
ここネパールでも連日とにかく日中は異常に暑い。
何度も書くが、本当にテントやトタン屋根の仮設での生活の人たちが心配だ。

昼食後、カトマンズ武道館へ。
その後、子ども達の通うバヌバクタ学校へ。
建物の被災度に関する報告は
こちらのブログをご参照下さい。

移動中も、街のあちこちで、
被災建物を見かける。
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その後、カトマンズ日本人補習校へ。
(正式名称はカトマンズ補習授業校)
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玄関でスタッフに挨拶をしていると、
たまたま訪問中であった、在ネパール日本大使の奥様にお会いする。
私達の訪問の意図を知ると
「どうぞよろしくお願いします」と挨拶を受けた。

国家公務員や、企業から派遣された駐在社員、
あるいはネパールの方と結婚された在住者の
子息の大半が通うこの学校は、
現地の日本人会が主体となって運営しているが、
れっきとした日本政府の認可校。
将来、ネパールと日本の懸け橋となる可能性を
多分に秘めた子ども達は、日本にとっても財産であるはず。
本来なら日本政府が雇った技術者が
被災度判定に来ても良さそうなものだが、
自腹で勝手にやって来た日本人に
それを任せる事に疑問は無いのか?…と思ったが、
そんなことを言う隙は無かったので、ここで苦言を呈しておきたい。

教室内には多少のクラックが生じているが、いずれも軽微。

多くの建物で、その設置状態が問題を生んでいる給水タンクは、
理想的な状況におかれていて全く問題なし。
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ちなみにこの屋上から見えるご近所の建物の給水タンクがこちら。
RC(鉄筋コンクリート)の柱1本で支えている。
地震の周期によっては、非常に危険。
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庭の裏のレンガの壁は崩壊。子ども達に被害がなく、本当に良かった。
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建物全体としては構造体にダメージは無く、
今後も使用は可能と判断した。

地震のみならず、経年変化により予想される懸念事項には、
その兆候をお話し、定期的に
建物を簡易チェックをすることをお薦めした。
日本の基準で診断し、日本語で詳しく内容を解説させて頂いたので、
安心して頂けたのではないかと思う。

その後は、在住日本人の方のご自宅、
そのご親戚の家など、数件の被災度を診断。

夕方、いきなり黒く雲が立ち込め、
信じられないような暴風が吹き荒れた。
外に立っている事が出来ず、車に避難。
辺りは一瞬にして暗くなり、爆風と雨に閉ざされた。
誰もがこの日、このあまりにも不吉すぎる夕方の自然現象に
「また何か起こるのでは?」と不安になった。

この日も日没まで建物を巡回し、
周り切れなかった個人宅は、
明日の朝、伺う事にしてお仕事終了。

子ども達の待つ、クンデ・ハウスに帰宅。
日中の暑さで疲労が激しかったが、
子ども達のこんな姿に、元気を回復。
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癒されます。
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何でもちょっとしたことが、本当に楽しそうな子ども達。
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さあ明日も、頑張ります!
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