アムチの思い


アムチとアニが、帰国を明日に控えた夜、
現地から電話が入りました。

代表危篤の知らせでした。
状況は非常に悪くなっていました。
人工呼吸器で生命を維持している状態だとの報告でした。

現地でリンポチェ(高僧の転生ラマ)からは

「もうすでに、魂は肉体を離れている。
 無駄なことをしてはいけません。
 呼吸器を外しなさい。
 きちんと逝かせなさい。」


と伝達されたとのこと。

ただこれまで、事あるごとに代表の元を訪れ、
様々な悩みを打ち明け、
たくさんのアドバイスを受けていたアムチは
どうしても、代表の死に目に会いたいと強く思っていました。
これまで大切な人の死に、
ことごとく立ち会うことが出来なかったアムチは
どうしても今回だけは見送りたいと、言い張りました。

チベット医学を修めたアムチが、
死に際してこれほどの執着を見せることは
予想外の事でした。
ましてや、リンポチェから
呼吸器を外すようにとのお達しが出ているのに
それをとどめる指示を現地にするなんて…。


実は…と、アムチはこんな話をしました。
「日本に来る前に、代表の部屋に行った時、
『もう何もやり残したことはない。いつ死んでもよい。』
って突然おっしゃったんだ。
驚いたよ。
だって今まで一度だって自らの死について
発言されたことなんてなかったからね。」



もしも代表が心停止で倒れられた時
アムチが現地にいたら、
あまりに深く代表を慕うあまり
さすがに少し、取り乱していたのではないかと思うのです。

「だからこそアムチが、初めて海外へ出たこのタイミングを
 選ばれたのかも知れないね。」
そう、加藤と石川は二人で話しました。
ただ、これはさすがにアムチには言えませんでした。



日本を定刻に発った飛行機は、
途中デリーを経由し、
4時間遅れでネパールに着きました。
空港から直接病院へと向かうアムチ。

病院に到着した5分後、
代表の呼吸は、静かに止まりました。
それは呼吸器を外して
1日半以上が経過してからの出来事でした。


アムチはずっと加藤や石川には
「自分が戻るまで、呼吸器は絶対に外さないように指示した。」
と言っていましたが、
実際はリンポチェのお言葉のあった時点で、
呼吸器を外すようにと伝えていたのでした。

病院の先生からは呼吸器を外したらすぐにでも、
呼吸は完全に停止すると伝えられていたのに、
2日近くも代表は、自力で呼吸をされたのでした。

そこに立ち会った誰もが
代表は、アムチの思いを汲んで
その到着の時まで
肉体にとどまられていたのだ…と理解しました。


そうしてこの日から、49日間にわたるプジャ(儀式)が始りました。

→続く
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