チベット本土を旅行された方の数は、そんなに少なくもないと思うのですが
そのうち、西チベットを旅された方は、やはり少ないのではないでしょうか。
だって、こんなところです。

行っても行っても、毎日こんな景色です。

公共交通機関がないので、
移動はあらかじめ、ラサなどの大都市で数週間の予定で
ランドクルーザーをチャーターするか
あるいは、運任せのヒッチハイクです。
ヒッチハイクはかなり辛いです。
道なき西チベット高原を走る車は、1日に1~4台ぐらい。
目的地が違ったり、どの車とも交渉が決裂したりすると
翌日まで待つしかありません。
そう、こんなところで、また1日過ごすんです。

ちょっと、泣けます。
それにヒッチハイクは、実は命がけなんです。
なぜかと言うと、何キロ先からでも、異臭を嗅ぎ付けて
チベット犬がやってくるからです。
チベット犬は、家畜を守るために飼育されており
「家族以外の動くもの」には、全て襲い掛かり、倒すように
生まれたときからしつけられるのです。
チベット犬は、大体3匹以上の群れで行動します。
土佐犬とまではいかないまでも、足の太い体躯のいい犬です。
実は石川は、このチベット犬に襲われました(涙)。
3匹のチベット犬に囲まれ、退路を絶たれ
そのうちの1匹に左手の手首を
もう1匹にお尻を噛まれてしまいました(大涙)。
チベット犬の目的は、「相手を倒す。」ことですから
噛み付いたら、標的が倒れるまで離れません。
手首とお尻に喰らいついたまま、暴れまわる犬に翻弄されながら
案外冷静に
「今日ここで、人生ゲームオーバーか。」と思いました。
「もうそういうカルマやったらしゃーない。ここで死んでも異議はあらへん。
せやけど、これまで生きてきた恩恵を、まだ何にも社会に返してへん。
それだけが心残りやわ。」
と思いました。
(普段は共通語のイントネーションで話していても 、究極の時、関西人は関西弁に戻ります。)
数分の格闘ののち、数百メートル先にたまたまいたチベタンが
犬に襲われている私を発見し、救出してくれました。
助かった~。
ただ、チベット犬は狂犬病菌を持っている場合があります。
あいにく狂犬病の予防注射をしていなかった私は
24時間以内に、発症予防の注射をしなければ、狂犬病の危険性があります。
でも、ここは西チベットのド真ん中。
どう考えたって、病院のあるような街まで、24時間で移動するのは無理です。
恐る恐る、噛まれた傷を確認しました。
5月の西チベットはまだ寒く、気温が零下だったため
尋常でない厚着をしており、歯形はくっきりとついているものの
皮膚は破れていませんでした。
セーーーーーフ!
死が目前かと思われた瞬間の「心残り」を
文明社会に復帰したら、忘れずに果たすと
チベットの土地に誓いました。
今でも時々、あの誓いを思い出し、身の引き締まる思いです。
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先日は楽しい時間をありがとうございました。あれほど上品なバター茶は初めて飲みました。おいしかったです。
ブログ、いつも楽しく読ませていただいています。今回はまた衝撃的な……エレガントで美しい石川様が、ドーベルマンも真っ青のチベット犬と格闘した過去をお持ちだなんて! と言いますか、そもそも西チベット高原をヒッチハイクで渡ったというのが驚き(唖然)。水など、どうなさったのでしょう? よく生還なさいましたね。。
実は私はバター茶が苦手なので、先日ご用意したものはかなり「私好み」に仕立てております(笑)。
西チベットでは、どんなところで一夜を明かさねばならないか予想も出来ないので、いつも食料と水は数日間、命をつなげるだけ持って移動していました。
時速80kmで飛ばす最新のランドクルーザーにも、正面から襲い掛かってくるチベット犬…その勇気は見上げたものですが、本当に恐ろしいです。
びっくり。チベット犬に噛まれた人の話をはじめて聞きました。写真でしか見たことないですが、土佐犬に毛を生やしたようなカンジですよね。。。かなりでかかったのでは? 石川さんが冒険家とは知らなかった。ご生還おめでとうございます。(笑)
実際、ヒッチハイクの外国人は、かなりの確率でチベット犬に襲われています(苦笑)。統括責任者の加藤にも確認したところ、彼女もやはり西チベットで犬の襲撃を受けたそうです。動物と死闘を繰り広げることって、あんまりないですよね(いや、普通はない!)。なので今となっては、貴重な経験だったと思います(笑)。